釣りに来るといやなことが消えていく。
ジョギングで走り始めると頭の中の世界が変わるように。
走り始めるといろんなことが心を過ぎり始める。仕事のこと、家族のこと、裏切られたこと、これからの楽しみごととか。釣りも同じだ。
渓に降り立つとそこには流れがある。静かな清らかな流れ。
渓魚たちはそういう環境じゃないと生きることができない。
ヤマメやイワナが遊びに来てくれないときに、いろんなことが心を過ぎり始める。目の前の流れはそれをゆっくりと流してくれる。
ときどき休みを入れ心を軽くしながら一つ上のポイントへ向かう。
魚が出るのを期待しながら川の流れの筋に毛ばりを落としていく。
その度に頭の中に浮かんできたいやな思い出が流される。
重い思い出を流すには釣りはいい。
帰省して少ないチャンスに訪れた故郷のいつもの川は特別だった。人に会うこともめったにないし、なじみの場所でナチュラルに自然に溶け込むことができる。気になるのは魚の気配、獣の気配、風のざわめき。
2011年3月東京電力福島第一原発の爆発でその谷や山、野や海に放射能がぶち撒かれた。そして4月原発から半径20キロ圏内が立ち入り禁止となった。我々は寝ていた布団を引っ剥がされるように突然避難を余儀なくされ、福島を、日本中さ迷う根無し草になった。
恐れていたことが現実になった。
希望はなかなか叶えられない。恐れていることは直ぐにいとも簡単に現実になる。
心にあるその希望の川を辿る。
2005年
2006年
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